190621 6月の練習

 6月8日9日は演出家の松山先生と音楽監督の由佳先生を東京からお招きしての初の通し稽古でした。全員が楽譜を外して演技に集中しましたが、演劇としてはただ読んでいるだけのセリフが長く続き間違えたりわからなくなったりすることが多く、5月につけていただいた段取りもうまくいかず、散々な結果になってしまいました。

 昨年の6月の松山先生の「シンデレラ」の稽古ではとても褒めていただけましたが、今年は散々でしたね。

 

 オペラは音楽でミュージカルは演劇だというジャンルの違いをとても感じた稽古になりました。ベテランの中高生たちはしっかり覚えて表現もしていたのですが、演劇としてのドラマ表現は弱く松山夫妻の求めている性格、年齢、所作などには達しておらず、多くの場面のセリフや音楽がカットになりました。

 先生方から見れば「何年もステージに立っている高校生や中学生ならもっとできるだろう!」と感じたのだと思います。確かに川口の子どもたちの演技力とはかけ離れた感じはあります。「ザッツ」の時に由佳先生から「合唱劇としてはまずまずですが、ミュージカルとしてはまだまだでした」と言われたことが思い出され、私が歌にこだわっていて、あまり演劇表現にこだわっていないことが大きな原因だとも思いました。しかし、それは桜丘の中高生や、よく勉強してある団員に対しての事で、セリフ、音楽や段取りが不完全なキャストが多すぎて、作品を作った先生方に本当に失礼な稽古を見せてしまったと反省しました。稽古を減らして能率よく行う事を考えたことが大きな間違いでした。舞台はこだわり抜くことが大切だという当たり前の事をしなければなりません。

 

それに加えて私は、コーラスの精度やソロの発声が良くならないことがとても気にかかっています。声楽の発声でできるミュージカルというものを目指し「コーラスミュージカル」というものを考え出しました。しかし、これには限界があるのかと思うこともあります。しかし、ハマースタインⅡのミュージカルなどはオペラを勉強した人たちが歌っていますし、A.ロイドウェバーのミュージカルにはオペラ歌手を投入することもあります。日本でも海外でも声楽を勉強した人がミュージカルのステージに立っていますので、本当に歌が上手ならばセリフも上手なはずです。

 しかし、各々の先生方もセリフを勉強したことがあるかというと、オペラにセリフがあるものは「魔笛」や「魔弾の射手」のようなジングシュピールといった特別なジャンルがあるだけなので、二期会でもセリフ(演劇)の稽古は半年しかありませんでしたし、藝大ではセリフの勉強はありませんでした。私のように演劇の先生と一緒に音楽劇で全国を回ったり、日本語でオペラを歌っていた経験のある人は少ないのかもしれませんので、しっかりとしたレッスンが行われていないのが現状だと感じます。今レッスンすべきはセリフやドラマ作りなのかも知れません。でも、本当に時間がありません。私が生徒に1フレーズずつ歌を教えるように、セリフを教えていたら毎日レッスンしても通し稽古になりません。しかし、良いものを魂を込めて作るしかありません。今まで家庭を顧みずにステージを創ってきたお母さん方や、夏休み返上で稽古に励んだ子どもたちの努力があったからこそ、今のSakuraCantabileがあると思うと、良いものを作るには妥協があったり、どこか冷めた気持ちがあってはならないと感じています。

 

衣装や道具に対する配慮や準備が不足していたり、多くの不備があるのは、私が中神さんにすべて丸投げしていたことが原因です。今までどんな仕事をして、どんなに松山夫妻に配慮を行ってきてくださったのかを知ることとなりました。でも、今回は今回の運営委員会のコンセプトでやり切ることも大切です。そこから新しい発見がもはやたくさん見えてきています。

 8日、9日の稽古から私は、ステージは「それを創っている人の姿勢が見えてしまう」という恐ろしさを感じました。子どもたちはみんな一生懸命で素晴らしいステージを行いたいと思っています。私たち指導者はそれを実現させてあげなければならないし、その気持ちをしっかり受け止め最善を尽くし努力の大切さを共に感じるステージを創らなければなりません。それには、私たちだけでなく父母のみなさんの協力あってのSakuraCantabileです。初めて行う事がたくさんあってわからないことだらけだと思いますが、今回がそれをわかるようになるチャンスにしていただきたいと思います。

 

 まずは、松山夫妻に納得していただける内容にしなければなりません。今回「ウィズをやりたいのでお願いします」と私が言った時に、夫妻は「この団体はオペラをやらなければもったいない」と言われました。多分その裏には「この団体はミュージカルはできない」あるいは「ミュージカルにはそぐわない」という意味も含まれていたのだと思います。でも、あえて行なったのは「たくさんの子どもたちに役がある」そして「2公演行なえばほとんどの団員に役がある」という事でした。今は、稽古に揃わない団員がいたり、未だに覚えていないキャストがいたりしてとても後悔していますが、私の予想では7月20日になってもこの後悔が続くような気がしています。私の甘さです。

 

子どもたちに良いステージを経験させたい。この思いは指導者も父母も同じだと思います。その気持ちを一つにして最大限の努力をして本番に向かっていきましょう。よろしくお願いいたします。

2019年06月21日