桜丘高校音楽科について


「桜丘高等学校音楽科はこんな所です!」 オープンスクールを終えて
「歌の世界も少し伝えます!」

「生徒による音楽科説明」中央が団長


6月15日(土)桜丘高等学校音楽館で「音楽科オープンスクール」を行いました。
 SakuraCantabileの団長が音楽科の説明を行い、副団長が歌をうたう。それもとても立派に行うことができました。そして、中3の団員が個別相談を受けて、小中学生も全体会に参加している様子を見ると「本当にこの団を作って良かった!」と思いました。


 このオープンスクールでは中3生は個別相談に於いて「音楽科に進学するかどうか」の意思を確認します。今年は入学すればポケットオペラから入団して、最もこの団体のキャリアが長くなる千晶さんと、音楽塾「第九」からカンタービレに入った優さんが進学の意思を固めてくれました。2人とも体格が良く声量もあり喉もあいてきましたのでとても有望です。2人のキャラクターは大変異なるものを持っていますが、共通点は考え方やアウトプットの仕方が大変自由な所だと感じます。ご両親がお子さんの意思に従ってのびのびと育てているように想像できます。また、将来の進路に対しても「自分を活かしてくれる音楽大学」というところがとても良いと感じます。2人とも音楽科の生活に慣れて努力を続けることができれば、将来凄い歌をうたう予感がします。

管弦アンサンブル

●SakuraCantabileには声楽を勉強しようとしている人が多いので「桜丘音楽科」と、その先の音大のことを中心に紹介いたします。尚、文中に登場するエピソードなどは私の経験による私見ですのですべてがそうであるとは限りません。

① 桜丘高校音楽科では普通に学校の勉強をして、私のレッスンをまじめに受けていれば国立音大(くにたちおんだい)、武蔵野音大などの有名私立音大には「指定校推薦」で入学できます。

A) 指定校推薦には学力考査がありません。ほとんどの大学が専攻実技(声楽)と面接です。但し、音楽大学は実技上位で合格できないと行くだけになってしまい、演奏会にも出演できませんので生徒の将来に適した学校を推薦します。

B) 音大は声楽家やオペラ歌手を目指すのが普通ですが、卒業後ミュージカルへ行く人も多いです。近年、国立音大では3年次からミュージカル実習が選択できるようになり、そちらの方面への進路にも有利になってきました。もちろん、洗足学園音大や大阪芸大は昔からミュージカル科が有名でミュージカルだけでなく芸能界へ進む人もいます。もちろん藝大からもジャンルを超えた有名人をたくさん輩出しています。しかし、しっかり学ぶのは音高も音大もクラシックが中心です。

C) 進路が私立音大であれば、高校生活は好きな音楽の勉強に集中できます。

(ア) 普通科1組の授業内容は普通科の中ではレベルが高くても高校生としては愛知大学レベルの大学に入学して困らないくらいの学習に留まります。基礎的な課題が出て暗記中心のテストで単位を修得することができます。1年生では中学の復習が続きます。
(イ) でも、これがチャンスなのです。1年間で専門音楽の基礎を身に付けられる時間がたくさんもらえるのです。愛先生も、早紀先生も、そして、名古屋で活躍している千明さんも、ほとんど、ピアノやソルフェージュ初心者で音楽科に入学してきました。高校1年生の時は思うように楽譜が読めずにとても苦労しましたが、あきらめずに努力を続けることができました。
(ウ) 音楽科に推薦で入学できるくらいの学力の人は中学で遅れてしまった学習を取り戻すこともできます。桜丘には全国大会に行く部活動が多いのも勉強時間をあまり必要としないおかげです。
(エ) 高校からの専門分野は幅広く勉強していては全国(1番)を狙えないと私は思います。音楽をする人も桜丘や豊橋を見るのではなく全国にいる声楽が大好きな人たちと戦わなければならないことをいつも忘れてはならないと思います。
(オ) 「中学までは視野を広げるためにしっかり勉強。やりたいことが決まった高校生はそれに向かって一直線!」が大切だと思います。迷っている間に高校3年間は終わっていくのです。
(カ) しかし「勉強しなくても大丈夫!」と思っている人はその考えの甘さから将来、専門分野でも力を発揮することができなくなったり、専門分野で挫折した時に「音楽バカ」になっていて、立ち直れなくなることがありますので、常に勉強や体力を作ることをおろそかにしないことは大切です。
(キ) 今まで学力で藝大や県芸を落ちた生徒はいません。心配で塾へ行く生徒もいますが、それは自分で特別な課題がこなせないとか、学力に対する心配を取り除く時間が欲しいからです。生活がハードなので、塾で過ごす時間を作らないと眠ってしまうという理由も多いようです。
(ク) 実技やソルフェージュに対しても不安で、外部レッスンを受けたりする人もいますが、生徒は同じことを教わっても、教える人が違うと違ったことのように感じることもあり、生徒は混乱して更にできなくなることがあります。伸びない生徒やその親はいつも心配で信じるものを多く持っていたいと思うのです。しかし、学校や先生を信じることのできない小さな心が、上達を妨げていることを知らないのです。その点、桜丘では私はパートナーシップレスナーの日比啓子先生と同じ方針でレッスンをしていますので、自分よがりにはなりません。松山夫妻からも厳しいアドヴァイスがあります。また、声楽のレッスンは同性が良いか異性が良いかという事を言う先生が田舎にはいますが、それぞれに良い点や悪い点があります。亡くなられてしまいましたが偉大な作曲家であった中田喜直先生と声楽家の奥様は、「若い女声の指導は男声に限る」と言われました。その理由は歌って教えなければどちらでも関係ないのだが、歌ってしまうので、どうしても先生の声や歌い方をマネしてしまい、若い子たちがおばさんのような発声や歌い方になってしまう。とのことでした。男声に教わると良いのは男声のファルセット―ネがとても、女声のチェンジに役に立つとのことでした。
(ケ) 国公立受験は本当に大変です。できれば、早期にお子さんが東京の私大に行けるお金をためておいていただき「藝大落ちたら国立に!」と、多くの声楽を勉強するトップ層の子どもたちが考えるようなプレッシャーがかからない受験をさせてあげて欲しいと願っています。元々、国公立を狙わなければもっと実技に集中できます。
(コ) 愛知県には県立芸大があります。こちらも「県芸受からなかったら名芸」くらいの気持ちで伸び伸び勉強して欲しいと思います。県芸も良い大学だと思います。学費がかからない分、その後大学院に進学して海外留学も視野に入れることができます。
(サ) 「国立に行ったら、あとは仕送りができないので帰って就職しなさい!」と親に言われていたのは私です。私の時代の私立音大は現在の学費とほとんど変わらないか高いくらいでした。現在私立は値下げや特待生が増え、国公立がどんどん値上げになって公私格差が是正されています。それでも、国公立大学の4年分が私立音大の1年目に払う金額とほぼ同等です。

D) 「1番になる夢」を追う事はまず、本当の事を教える技術と実績のある先生に就いてその世界に強い憧れを抱くことです。

(ア) 桜丘のバスケット部を例に出しますが、彼らが強いのはプロを教えていたトレーナーが教えていて、しっかり育てばフェニックスなどへの道が彼らにはあります。
(イ) しかし、なかなかそうはいきません。全国大会に出てもプロになれる人は少ないのです。また、よほどバスケットが好きでないと、こんなに大変な練習をずっと続けていくことはできずに普通の仕事に就くのです。音楽の世界もそれにとても似ています。
(ウ) 部活動と音楽科の違いはその進路にあります。吹奏楽部の生徒は音楽科の生徒以上に長時間練習をしますし、もっと休みがありません。しかし、ごく少数しか音大に進学しません。音楽科の生徒は、音楽大学または音楽関係の短大や専門学校に進学する生徒がほとんどです。それは、吹奏楽部は「金賞」を取ることが目的で、音楽科は将来音楽関係の職業を目指して勉強するからです。それでは、進学する音大入試の特徴を紹介します。

E) 私立大学は良い所を評価する入試。国公立の東京藝大、愛知県立芸大はミスがあると受からない入試。

(ア) 学費の違いや教授陣の質が国公立のレベルと競争率を上げ、その現象を招いています。本来は良い所を評価するのが受験だと思います。しかし、東京藝大レベルになるとそれを超越して、課題曲と自由曲の演奏をそのままプロのステージに乗せてもお金が取れるような完成された歌を歌います。しかし、合格したすべての人が他の曲をそのように歌えるとは限りませんし、卒業する時に入学時の自分の演奏を超えられない人もいます。美術学部でもそんなことは普通にあります。
(イ) 藝大、県芸を目指すには幼少からのしっかりとした音楽教育(清川先生のような音高、音大で正しい勉強をした方に教えていただく事)と普通科目の学習能力(中学までオール「4」程度以上)が必要です。入試当日、失敗すると受かりませんので強い精神力と浪人する覚悟が必要です。私が生徒たちに早起きを継続することやランニングをしてからだを鍛えることを奨励するのは心が弱いと国公立には行けないからです。ピアノも普段は弾けても、本番緊張して止まって弾けなくなってしまったらアウトです。藝大は国立音大に通いながら毎年受験をしたり、教育大学を卒業してから入学してくる人もいます。
(ウ) 浪人生は以前よりも減ったと言いますが半数くらいだそうですので、合格する50人中、現役は半数の25名前後です。女声は15名程度。愛知県で3本の指に入るのが合格の目安ですので学生音楽コンクール入賞(3位まで)は藝大レベルです。松下真は2年生の時名古屋大会で2位になり全国大会に行きましたが3年生の時は入選止まりでした。桜丘の生徒は時々入賞しますが「声楽の勉強に集中したい」ということで、国立に行きトップクラスになる人が多いです。それだけ、国語と英語、ソルフェージュ、音理、ピアノと声楽を両立させるのは難しい事と、浪人をしたくないのだと思います。ちなみに県芸は本選出場レベルで合格しています。9月の予選敗退者も、3月まで頑張って合格する生徒もいます。
(エ) 声帯自体が幼い高校生は急にのどが成長して声が出るようになったり、努力を重ねてある日突然発声のコツをつかむこともあります。私も高3の時に藝大の先生に「全然だめだから音楽が好きならカウンターテナーか歌謡曲を目指した方がいい」と怒られるのではなく親身になって言われたことを覚えています。しかし、ある日突然発声の勘をつかむことができて、「当日失敗しなければ大丈夫でしょう」と言ってもらえる日が来ました。私は何とか間に合ったので良いですが、中には大学を出るころにようやく大人の声が出る人もいますし、20代まではヘロヘロしていた声が40代になって素晴らしい声になる人もいます。声楽はピアノのようにある程度練習すればある程度まで上手になるものとは違うところが難しくもあり、奥が深く興味深いものでもありますが受験生にとっては大変な問題です。
(オ) 私立の指定校推薦をもらうと、国公立は受験できなくなります。推薦入試は年内に終わりますが、国公立は2月3月まで頑張らなければならず精神的な負担も多大です。名古屋の人たちは浪人や仮面浪人を普通にしますので、東京藝大や京都市立芸大への進学も伸びます。
(カ) 音楽経験が浅い人は練習時間や勉強時間が必要です。体調管理に気を遣い、友達とも深くつき合おうとせずに広く上手に付き合える技を身に付け、時間を大切にできる人になれることが大切です。夜に毎日スマホで友達と話し込んだり長時間LINE交換している人には、国公立現役合格は無理です。
(キ) もう一つ受験に大切なことがあります。それは「音楽に対する気持ち」です。よく、真面目な優等生やその親から「受験に集中したいから合唱やアンサンブルを控えてください」「外部での活動は少なくしてください」という人がいますが、そういった生徒はなぜか国公立に合格した試しはありません。
(ク) 私が高校3年生だった時は、私の先生が「優秀な学年ほど多くの行事を行う」「行事を行った時に受験でも結果が出る」と言って、「第九」の演奏会の練習に毎土日通ったり、合唱の定期演奏会を行って夏休みもほどんどなく20曲ほどの曲を毎日練習したりしました。修学旅行も3年生であり、合唱の合宿もありました。しかし、先生の言われたとおり、国公立に7名。国立に8名合格する最高の結果を出した学年になりました。近年では天野穂乃香さんや、佐川由梨奈さんは、SakuraCantabileの活動にすべて参加して大変前向きに取り組み県芸に行きました。藝大へ進学した松下君は合唱部の活動に加えて、ドラムを叩いたり、三河オペラの合唱に参加したり、桜丘の活動の範疇を超えて飛び回っていました。また、彼らの学年は合唱部全盛期で、3年生の1月。センター試験の1週間前に行われた「ヴォーカルアンサンブルコンテスト」にも参加し見事3年連続での「金賞」を取りました。それに参加した3年生の声楽科の生徒は藝大、県芸に合格。2名が国立を一般入試で(1名は特待生受験。1名は藝大併願)合格しています。冬休みは毎日アンサンブルの練習に取り組みましたがとても楽しそうに練習をしていました。受験前のそれらの先輩たちは、自信があるからではなく、すべての行動がやりたくて仕方がなくそれが彼らの音楽や心の栄養になって育っていました。実際私も、高校時代の「第九」が後の音楽をする行動にとても大きな影響を与えているし、合唱の演奏会で行った曲が一生心に残っています。もちろんそれが受験のために勉強時間を奪っているとも感じたことはありませんでした。今、音楽科の合唱で取り組んでいる「三つの抒情」はその時の曲です。
(ケ) 不安が多くダイナミックな行動がとれない人は、現実的で小さくまとまる性格なのだと思います。なので、自分の上達を自ら阻んでしまうのでしょう。何でも一生懸命情熱を持ってできる心の大きさが成長には必要だと感じています。管楽器の人で毎日睡眠時間3時間で頑張っていた人が全く伸びなかったこともありましたが、練習や勉強をすることによって不安を取り除いていたのではないかと思います。そういった人は学校の成績の順位をやたらと気にします。レベルの高い大学に入るとかコンクールに入賞するのが目的では良い音楽を奏でることはできず上達しません。音楽が好きで仕方がなくて練習をして自分を高めた結果が「進学」や「賞」でなければならないと思います。

F) 現在の桜丘の声楽専攻生の良い所は、大きく羽目をはずす生徒が少ない事です。

(ア) 私の個人レッスンを受けて、SakuraCantabileの活動を続けていればとても忙しいです。それに、7限8限補習。7時からの朝練。20時までの夕練。土日の稽古・・・。それでも、全国を目指している部活動と比べるととても甘く緩いと思っています。それは、個人で勉強することに関しては拘束できないからです。だから、Cantabileやアンサンブル、合唱が必要なのです。それを自分の栄養にできる力が実力を生むことなのだと思います。
(イ) 忙しいので目標があやふやになったり、深く悩んだり、他に逃げようとするとすぐに体調不良や心の不安定が起こるはずです。その結果上達が止まります。でも、それは一生懸命生きている証拠。音楽が好きな証拠です。その経験は自分を知ることにつながります。逃げてしまうかそこに留まるか前進できるかはその子の能力次第です。でも、私は前進できるように応援をします。心が折れてしまっている子には優しい言葉をかけます。
(ウ) 何よりもまず、歌をうたうことが大好きなことと、将来プロを目指すことがなければ藝大も国立での上位者もありません。しかし、進路や上手になる事だけが音楽を勉強するのに大切なことではありません。



② 桜丘高校音楽科はプロの演奏家を育てるだけの場所ではありません。

A) 毎年、中学生の個別相談を受けると「将来の進路のことについて心配なので公立の普通科と迷っている」という話を聞きます。私はこのように答えます。
(ア) 若い頃に好きなことを一生懸命やることこそ、人生に大切なことに気づくことができるかけがえのない経験です。
(イ) あなたが、国語や数学、英語などを勉強することが好きで、将来の選択肢を広げることが大切なことだと思うならば普通科が良いでしょう。
(ウ) 今、あなたが「寝ても覚めても音楽がしたい」と思うのならば迷わずに音楽科に進学しましょう。音楽を精一杯できる環境があります。
(エ) でも、好きなことに向かって努力することは容易ではありません。その好きなことに対する理想が高ければ高いほど、自分の前に立ちはだかる壁も高く、時には心が折れてしまうほど辛い事がたくさんあります。
(オ) そんな苦労の上に得た演奏の成功や上達はかけがえのない喜びを与えてくれます。そして、その演奏が他人に伝わり大きな拍手で迎えられた時は自分の喜びを超えて人を幸せにすることもできます。
(カ) 桜丘の音楽科にはその喜びを経験できるステージがたくさんあります。たとえあなたが、将来、音楽で成功できなくても、高校での演奏体験や、一生懸命努力して大きな壁を乗り越えた経験はきっと役に立つでしょう。普段クラシックを聴かない1組の同級生や桜丘の先生方があなたの演奏に驚き、大きな拍手をくれるのです。
(キ) 公立の音楽科では定期演奏会や卒業演奏会にピアノやヴァイオリンの上位者以外は演奏できる機会はとても少ないですし、普通科に進学すればコンクールに出るくらいしかステージに立てません。桜丘では卒業演奏会とステージテストには必ず出演ができます。そして、数々の行事で独唱やアンサンブル、合唱を披露することができます。

B)近年では、音大以外に多種多様な進路を選択する生徒にも対応できるようになりました。

(ア)県芸の「多くの学力を身に付けなければならない」というハードルの高さを考えると、実技に集中して県芸に合格できる程度の実技力を持つと、金城学院大学の芸術学科は1年目の学費が50万円で済むという制度があります。金城は多くの充実したコンサートを行っており活躍の場も多く、更に、音楽大学よりも就職のエリアが広い所が「大学まで音楽を追求してその後は自活する」という堅実な人には向いていると思います。高校入試の時に「金城でOKならば桜丘音楽科に来てください」と私が言えるほど、金城との太いパイプがあります。

金城学院大学文学部芸術学科ピアノ科教授 長谷川淳 先生 「日本を代表するピアノレスナーです!」  長谷川先生が桜丘のピアノ専攻主任でいらした頃はよく生徒が「JunJun」(淳純)と言っていました。今年度から桜丘音楽科特別招聘講師として帰ってきていただくに事ができました。

(イ)金城ががんばれば、名音大や名芸大も負けてはいません。桜丘の卒業生が2年連続で特待生に選ばれています。何と全額免除です!国立にも充実した特待制度ができました。しかし、国立の特待の実技レベルは藝大レベル。半特待や4分の1特待は狙えるかもしれません。

(ウ)Cantabileの方々には関係ないかもしれませんが、音楽科に入学したら進路が音楽大学に限られるわけではありません。河合千明さんのように愛教大に進学した(国立特別推薦入試)生徒もいますし、他にも音楽科の授業をしっかり受け行事にも積極的に参加しながら一般入試で立教大学、新潟大学(東京音大を併願して東京音大に進学)、愛知大学、愛知淑徳大学、南山大学などに進学した生徒もいます。また、家庭の経済状況が急変して就職しなければならなかった生徒や、はじめから保育士になりたかったり、ヤマハの講師になりたくて入学している人もいます。音楽科単独クラスの時では対応しきれなかった様々な進路を現在は普通科の強力な進路指導部が対応してくださるので「高校は精一杯音楽をして音大には行かない」という生徒もいます。音楽科=音大 と決めつける事は過去の事で、音楽科に進むと音楽大学にはとても行きやすいと考えていただきたいと思います。

・それでは高校入試やレッスンなど具体的な話に進みます。

ヨーロッパ国際ピアノコンクール in Japan 全国大会「金賞」の長井さん

 

③ 中学での成績が良ければ奨学生制度もあります。

A) 学習特待生はかなり基準が高いです!(これは毎年10月に校長先生が発表することになっているので話すことはできません)
B) 豊橋子ども声楽コンクールの「最優秀賞」(中学生の部)は奨学生の権利が与えられます。(県立芸大を目指すくらいの評定は必要です)
C) 音楽を専門に勉強するにはとてもお金がかかります。桜丘はお金がかからない方だと思います。
・公立の音楽科でも優秀な生徒はホームレッスンが土日に入りレッスン代を払うことが普通です。地域の有名な先生は1レッスン1万円。東京では2万~5万円が相場です。桜丘の授業料をすぐに超えてしまいます。
・内藤先生に聞くとよくわかりますが普通科に進学してしまうと、音大受験には個人レッスンの他にソルフェージュ、音楽理論などのレッスンを受けなければなりませんし、音大の先生にも遅くとも3年生になったら就くことが必要ですので時間と費用が大変です。また、生徒に適した良い先生につけるかわかりません。
D) 桜丘高校音楽科はレッスン代を余分に取りません。
・パートナーシップレスナーの日比啓子先生は現在でも数々の生徒さんたちを大きなコンクールに入賞させたり、藝大に進学させたりしています。日比先生も東京の有名な先生ですが、桜丘で受講する時のレッスン代は5,000円です。(試験で良い成績を取らないと見てもらえませんが)現在、日比先生の後輩にあたる方々が各大学の教授や科長などをしておられますので、レッスンしていただけると将来プロを目指したい人にはとても有利です。

副団長のソロ

 

<声楽の世界>

A) 声楽を追求すると世界は無限に広がります。

(ア) 音楽のことはもちろん、語学や歴史、文学、他の芸術のことにも興味が出てきます。そしてからだも鍛えなければならないし、自分のからだや心の事も知らなければなりません。

B) 楽器の人は本当に楽器を愛しています。

(ア) 上手なピアニストはピアノを自分の一部のように感じ愛していてどんなに長い時間一緒にいても飽きません。(人によって違いますが)
(イ) 管楽器の人が大切そうに自分の楽器をいつまでも磨いていたりするのは、その楽器が愛おしくてたまらなくなるからです。何時間もリードを削っていたりする人もいます。
(ウ) 楽器は愛すれば愛するほど自分を理解して自分の感情を音に変えてくれます。時にはもっと自分に合った楽器を探して、愛した楽器とお別れしなければならないこともあります。普通の人から見たら、かなりおかしな感じがすると思います。プロのヴァイオリニストは何千万円の楽器を手放し、数億円の楽器に買い替える人もいる凄い世界です。

C) 歌は自分のからだの中にすべてがあるので、幸運なことにお金はかかりません。(しばしば耳鼻科や内科にはいかなければなりませんが)

(ア) しかし、残念ながら自分とお別れすることもできません。「もっと大きな体や肺活量があったら・・・。」とか、「もっと響く顔や大きな声帯を持っていたら・・・。」と、思っても買い替えることはできません。
(イ) 自分をメンテナンスして成長させるしかありませんし、自分の限界を見極めた歌い方も考えなければなりません。ですので、自分を粗末にする人は上手になりません。自分を歌手として理想のからだに仕上げ、自分を「自分が好きな人間」にしていかなければなりません。「私は自分のこんなところが嫌い」と思うところは直す努力をし、自分の長所だと思うところはとことん磨いていきましょう。
(ウ) 成長期はどんどん声帯の状態が変化して大人になっていくし、20歳代で凄い声で歌えていても、30歳、40歳になれば良い発声をしていなければ、歌えなくなったり喉をつぶしてしまうこともあります。でも、それを正しくコントロールしている人は70代になっても良い声で歌っています。若い頃は不安定な声とのお付き合い、そして、30を過ぎると老化していく自分とのお付き合い、そして、歌を更に続けていけば一生が自分の肉体とのお付き合いです。

D) 上手な音楽家は地位や名誉を求めません。自然体でプロになる人や自然体に音楽を辞めていく人が多いです。人を蹴落として名誉や地位を得ている人や、現実に嘆きながら演奏をしている人もいますが、その人が凄い声を持っていても良い音楽家と感じられることができません。音楽は技術が高いほどその人の人格を表してしまうからです。

(ア) 良い大学に入って良い成績を取ってなどという小さな事にとらわれず、自分が歌を愛して生き生きとして歌っていたら、目指す大学や良い結果、良いステージが自然についてきた人が一流になります。私はステージで輝いている声楽家ほど尊敬できる人はいないと感じています。
(イ) 大学時代の私の友達には本当にすごい人がたくさんいました。本当にすごい人は現役合格が多いように思います。(半分以上が地道な努力をしたり、のどや音楽の成長を待って入学した浪人生でしたが)彼女(彼)らは藝大に入るのに、ほとんど普通の生活をしており、普通の努力で入っているので力みがないのです。
(ウ) 私は、大学を卒業した後、同窓生を集めてオペラの団体を作り、3回の公演を行いました。その2、3回目の演目が「魔笛」でオーケストラや大道具も揃えて行なったことが後の「豊橋市民オペラ」や「CityOpera」につながっています。そこで、「3人の童子」という子どもの役があるのですが、それを「音大を目指す高校生たち」にお願いしました。その公演は2月と5月。2月なんて受験を1カ月後に控えている大切な時期。第1の童子は藝大を受験します。私は、稽古や待ち時間も多いので心配でなりませんでしたが、本人は「やりたい!」と、目を輝かせて言いました。そして、最後まで全出席。そして、見事藝大にも現役合格しました。確かに私の知る現役合格の同級生を見るとそんな人ばかりでした。
(エ) ところが、ここが重要です。その子はその後どうなったかは知りませんが、そんな前向き天才少女ばかりが後に音楽で成功するとは限りません。正しい声楽の技術を学んで普通の努力で「歌が大好き!」だけで上手になっている人は、こだわりがあまりなく、あっけなく卒業と同時に歌をやめてしまう人もたくさんいました。
(オ) それ以上にショックだった思い出は、私が大学の1年の時に伴奏をお願いしていたピアノ科の同級生は、その前奏を聴くだけで私のからだがしびれてしまうほど上手で「いつまでも一緒に歌っていたい!」と思えるようなピアノを弾きました。「音色が魂を奪うのです!」しかし、その子は卒業後すぐに同級生のテノールと結婚をして、そのテノールと共に自活するために養護学校の先生になりピアノをほとんど弾かなくなりました。私はその人の音楽を聴けなくなってとても残念でした。そんな、魂を奪う音色を出す人がいっぱいいた藝大でしたが、音楽を続けない人は、多分こんな理由からだと思います。
(カ) 正しい技術と音楽性を素直に先生から受け入れて、毎日長時間の練習を幼少から続けてきた人は、ある時点で「自分は何のために音楽をしているのか?」と気づくようです。それが「両親やおじいちゃんおばあちゃんを喜ばせたかったから」だという人も多いようです。
(キ) 藝大は1年生の時に男女交際が炸裂します。それまでの音楽一筋だったストレスを一気に発散させるかのようです。人付き合いも得意でない人が多いので、人間関係がぐちゃぐちゃになります。でも、由佳先生や田辺先生は、あまり人とは付き合わずにまっすぐ家に帰っていたと言っていました。そんな事も成功する秘訣かも知れません。しかし、人間にとって大切なことは「愛だ!」と思ってその愛がファンタジーを奏でている間は良いのですが、現実の世界に行ってしまうと音楽とは無縁の世界に旅立ってしまうこともあるでしょう。それはそれでその人が幸せならば良いのですが、私はそんな凄い才能を捨ててしまうのは「もったいない」と思うしかありません。私がお金持ちだったら絶対にそのもったいない多くの人のためのステージを企画して給料が払いたいです!

E) 世界的に活躍している音楽家は藝大が多い。日本で活躍している声楽家には国立音大出が多い

(ア) 音楽を始めたのが遅く、苦労したり努力をして、歌に強く憧れ、こだわって成長した人が国立には多いのだと感じます。
(イ) 私学の伸びやかさや、先生方が「学校のために生徒を大切にする」という私学ならではの姿勢も影響していると感じます。

F) 音楽を続けることの素晴らしさと教えることの素晴らしさ!

(ア) 私は幸運なことに、健康を害していたことなどの挫折を体験しながらもここまで声楽を続けて、お金をいただいて歌うことができています。東京やイタリアで勉強をすることができ、専門の歌を教え続け大好きなオペラやミュージカル、合唱の指導も続けられています。
(イ) 音楽に接すると心が熱くなりときめきます。昔の事を思い出しても、そこから音楽が流れ出て、15歳の気持ちになったり20歳になったり30歳に戻ったりすることができます。反対に音楽を聴けばその時のことが走馬燈のように流れ出ることがあります。そして、イタリアンテナーなのでオペラの舞台に立てばいつも20歳前後になりきることもできます。
(ウ) こんな素晴らしい世界を体験し続けることができて本当に幸せです。桜丘やCantabileの生徒たちが将来、私が今感じているような体験をして、私の作る舞台で今よりも発展したオペラやコーラスミュージカルのステージで演奏してくれることが昔からの私の夢です。
(エ) 他の音楽高校にはSakuraCantabileや桜リネットアンサンブル、桜フルートアンサンブルのような、卒業生が帰ってきて、或いは依頼されて演奏できるような場所はありません。私がこれらの活動を行っているのは、桜丘音楽科の生徒たちの心がとても素晴らしいからです。また、卒業した学校に帰ってきて演奏する人がいること自体がすごいことだと思いますし、そんな学校はどこにもないと思います。
(オ) 歌を教えるということは、自分の魂を子どもたちに与えるのと同じだと感じます。生徒が真剣になればこちらもその気になります。私は自分の教えた生徒が高校を卒業して演奏してくれれば、いそいそと会場に出かけます。それはうれしくてたまらないからです。

 是非、桜丘高等学校音楽科で勉強をして、生涯、演奏に携われる素敵な人生を歩んで欲しいと願っています。教師は生徒の事をいつまでも忘れていません。おばさんになっても歌いたかったらいつでも戻ってきて欲しいと思っています。